イラストの練習('24/01~'24/03)

前回の目標の振り返り

正直に言うと前回に掲げた目標についてはアニメを観ること以外忘れていたし、そのアニメを観るについても目標にしたし観るか~とはならなかった。2回しかやってないのに既に目標を掲げて振り返る行為を形骸化させてしまったらしい。

 

△ 半分をインプットに充てる

△ C103で買った画集をそこそこ真面目に眺める

とはいえ1月の頃は去年末からの惰性でインプットに傾いたままになっていたこと、3月になってこの目標を掲げたこととは独立にやっぱり模写をやった方が良いよなという結論に至ったことで結果的にはこの2つについてはまあ半分くらいは達成という感じ。

 

△ 引き続きアニメを観る

この3ヶ月の間に大室家は観たから一応アニメ観たって言って良い?

 

今回描いた絵

*1で髪の線画についての説明を読んだので描きやすい正面で試してみるかということで描いた。

簡単な構図な上に顔と髪くらいしか描いてないのに作業が進んでからバランスがおかしいことに気付いて大きく修正するみたいなことを繰り返してしまいやけに時間かかった。

 

何だかんだ今まで1枚で2人収めるのをやったことなかったのでやってみたがまず単純に作業量が2倍なのが厳しい。

折角2人収めるなら何らかの絡みがある状況設定にすべきだよなと思いつつも、思いつかなかったのでとりあえずで横に並べただけみたいな感じにしてしまった。とはいえ、絡みを持たせながら1枚に2人収めると結構ごちゃついてくるし配色とか構図とか視線誘導とか色々考えることも多くて難しい一方で面白さでもあるんだろうな~と想定は持てたのでそれは良かった。

やっぱり配色とか構図とかって思いつかないので適当で終わりじゃなくて考える習慣つけないと引き出しが増えないよな~とも思った。

 

配色とか構図とか考えていった方が良いよなとなったのでそのあたりから考えるのを久々にやったが、画面全体を上手く設計する能力って顔, 髪, 服とかの各要素を上手く描くとはやっぱりまた違う能力だよなと再認識してた。(n回目)

 

夜に部屋の電気落として描いてたら(秋里コノハの真似)部屋の暗さに合わせて画面全体が暗すぎになってしまったので途中で明度を上げるなどをしており、普通に明るい部屋で描いた方が良いなと反省。

 

フリルのある服を描いてみたい気分になったけど服のデザイン考えるのは厳しいし何かそういうデザインのキャラいないかな~と思って数分考えて浮かんだのがウマ娘エイシンフラッシュだったので描いた。

これに関しては描きやすいから顔を正面向きでということは考えてなかったのだが、最初に載せた描きやすいからと正面向きで描いたやつとほぼ同じ向きになってたことに描き終えてから気付き、手癖の存在を自覚。服の描き方も前に技法書読むとか上手い人の絵眺めるとかして検討したけどよく分からず以降諦めたということで手癖で終わらせてるし、描く中で手癖の割合が段々高くなってしまってるっぽい。

 

 

このまま何となく描くのを続けてても多分手癖の割合が増えていく一方で良いこと無さそうだしとりあえず矯正の意味も込めてしばらくは模写とか中心に練習していった方が良いのかもということで模写をしたり、そうは言っても模写はだるいので布団で転げてたりしてたら一ヶ月が経過し、今に至る。

 

気分転換も兼ねてスケッチしたリンゴと皿

スケッチは色の濃い自然物をモチーフに選ぶことで色が分かりやすい+形が決まっていないので形が正確に取れてなくても違和感が生じにくい、と聞いたのでリンゴを描いたがそうは言っても普通にかなり難しい。描き終えても手応えとかも特に無く苦しい。

とはいえ真面目に物の色と光が当たってる場所を見て再現を試みるのってやっぱり大事だなとは思った。例えば白い紙の上にリンゴを乗せると陰になる部分はリンゴからの反射光で赤みがかって見える、というイラスト技法書で説明されまくってる話があるが、改めて落ち着いて観察すると思ってたより反射光の赤みが強く見えたとか基本的なところから気付きがあった。

まあ苦しいのでスケッチはこれしかやっていないのですが……

 

その他の話題

CLIP STUDIO PAINTのver3.0がリリースされた。今まで買い切り版を使っていたので2.xで追加されていた機能も今回初めて触ったわけだがとりあえず目立つところでは制作時間記録が嬉しい。特に意味もない作業に無駄に時間がかかっていること・イラストをやっていくつもりで最初に時間を確保したのに途中で布団に帰るなどをしているせいで想定よりも取り組んだ時間が少なすぎることなどが可視化されている。あと色収差は使いどころが全く分からなかったのでやったことなかったけど機能として一発でかけられるようになったので軽率に試せるようになったのはちょっと嬉しいかも。

同時にTABMATEがiPad対応したので外で何か描くのがやりやすくなった。iPadは大学院に行ってたころは計算ノートとして使っていたが卒業以降は全然使う機会も無く勿体ないよなと思っていたがようやく使う場面が来た?

 

 

イラストの練習は大学院入学のタイミングで始めたのでこれで3年が経過したらしく、時間経つのが早すぎてひっくり返ってる。

 

 

次回の目標

・健康の維持

今週に入って首から肩がやけに痛みだして整形外科に行ったらストレートネックですねと言われた。初めて聞く言葉だったがレントゲン写真を見たら確かに首が真っすぐ伸びていた。液タブに向かう時の姿勢もそうだけど長時間モニターを見ることを強制させてくる労働がだいぶ悪いだろとは思うが生活に支障が出る健康状態になったら絵がどうこうとか言ってられないので健康の維持が最優先課題だなと思う。

こういったことをわざわざ意識していかないといけないあたり何しても若さでカバーして健康体でいられる年は終わったようで悲しい。

 

・出かけて撮った写真を元に背景描くやつを2枚以上やる

現実にあるような雰囲気の背景でイラストを描いていきたいという気持ちがあるのだが、多分写真撮ってきてそれを参考に描くのと相性良いはずなので慣れていきたい。

あと普通に旅行をしたいのだがM3に行くとかライブに行くとか年末年始の帰省とかで何だかんだで毎月のように遠出してるせいで旅行用の遠出ゲージが残ってない(が、4~6月は1回くらいどこか行きたい、スターズオンアース出るなら宝塚記念観に行きたいな)。

 

・以上の目標を6月末まで忘れない

 

 

www.pixiv.net

イラストの練習('23/10~'23/12)

前回の目標の振り返り

割く時間を増やす

 生活に慣れてきたこともあり平日に労の後に絵の練習をやれるようになってきた。一方で土日は昼に起きて家事を少しやって競馬観て外してふて寝してたらもう夜で、夜からやっていく気にもあまりなれず終了という日ばかりだったので休日の使い方については次回の課題。

 

○ アニメを観る

 星屑テレパスウマ娘3期・16bitセンセーションを観た。今回は久々に毎週リアタイで観ていたが、次回まで1週間空くところとか放送中のタイムラインの空気感とか決まった曜日の決まった時間に観ることで生活の一部に取り込まれる感覚とかの以前感じていた面白さを思い出すことが出来て良かった。特に16bitはこういった要素が楽しい作品だった。

絵の練習という観点からもキャラデザやカットの明暗/配色のバランスでなるほどとなる場面があったり二次創作をpixivに投稿するとか出来たし良かったと思う。

 

今回描いた絵

この3ヶ月は久々にアニメを観てたこともあり二次創作に比重がやや傾いていた。

 

・16bitの秋里コノハ

当アカウントが知ってる数少ないエロゲ曲であるところのハミダシクリエイティブ凸OPの一冊のアロー*1のポーズ。

エロゲの制服はなんか一般のマンガやアニメの制服とは雰囲気が違うけど今まで描いたことないしこれからも描くこと無さそうだったので一度描いてみたく服もこっちに合わせたが、だいぶ模写になってしまったので、服は16bitの方に合わせた方が良かったかもしれないと後から思った。

 

ウマ娘ライスシャワー

背景をクリスタの3D背景素材をなぞって大体終わらせた。クリスタの3D機能がやけに充実してることに気付いたがClip Studio Modelerとかいう3Dモデラーもあったし自分が想定していたよりずっと3D関連機能は充実しているっぽい。*2

 

ところでオリジナルタグだけ付けてpixivに投稿した時とは違い作品タグとキャラ名タグを付けると普通にブックマークがつくのでダッシュボード(投稿したやつのPV数とかブクマ数とかが一覧で出てくるページ)を一日に何度も開いてしまった。

 

 

・自分が大学生の頃に挫折した理学書を読むセーラー服のオリキャラ

理学書を読んでるキャラ、特に自分が読んでよく分かんなかったやつを読んでるのを描きたいなという気持ちが前からあったことを思い出して描いたが結構描きたいものを描けた感覚があって良かった。こういっためちゃくちゃ自分の体験本位な絵を描けるのは絵を始めて良かったところだなと思う。

 

読んでた時に作ったノートを大学院を卒業したタイミングで全て捨ててしまったのでこの本を読みながらどういうメモを取るのが自然なのかよく分からなかったので初めて全てを処分したことを少しだけ後悔した。

 

次回の目標

・半分をインプットに充てる

例えば「髪の線画において意識していることは?」と自問してみても特に何も言語化出来ないので、無意識のうちに理屈ではなく感覚ベースに寄っていた。どちらが良いとかでは無いのだろうけど今自分の性格的には理屈に寄せた方が向いていると思うし技法書を読む時間を増やしたい。

ここ3ヶ月は週1枚模写するか何か描くことを意識していてそれは8割方達成出来たのだが、代わりにそれ以外ほぼ何もしなかったので事前にインプットに割く時間を切り出しておく。

 

・引き続きアニメを観る

何を観るかはまだ考えてない

 

・C103で買った画集をそこそこ真面目に眺める

上手い人が描いた絵を眺めるの結構大事な気がしているのでC103で買った*3画集は上手すぎるな~って言いながらパラパラめくって本棚にしまうだけではなくもうちょっと真面目に眺める

 

www.pixiv.net

*1:

www.youtube.com

*2: 

www.clip-studio.com

六角大王Super - Wikipedia

六角大王Super(ろっかくだいおうスーパー)は、株式会社セルシスで開発および販売されていた3DCGソフトウェアである。1992年に開発され人気を集めたフリーウェア、六角大王の製品版である。

元々は株式会社終作によって開発および販売されていたが、2011年12月1日よりセルシスへ権利が譲渡され、同社による開発販売に移行した[1]

2020年にこれは発売が終了しているが後継的な位置づけ?としてClip Studio Modelerがあるらしいし結構前から気合い入れて3Dやってるっぽくもうちょっと機能を使っていった方が良いのかもしれない。

*3:といっても現地に行く元気は無いのでメロブ通販

イラストの練習 ('23/04~'23/09)

 

4月~6月

新年度を迎え、実家を出ての一人暮らしおよび労働が始まってしまった。慣れていない環境での慣れていない生活によって普通に疲弊しており最初の1ヶ月くらいはわざわざソフトを立ち上げて何時間もかけて絵を描いていくという気力があまり出てこなかった。

とはいえ少しは絵の練習をする気持ちもあったので5月上旬あたりまでは画集を眺める、Instagramで女性向け洋服ブランドアカウントをいくつかフォローして流れてくる服を時々模写するなどをしていた。(人力ディープラーニング)

 

5月くらいから生活にも慣れて絵を描くことへの気力が少しずつ残るようになってきたので、このあたりで気合を入れ直していくかと液タブを新調した。労働で気力を削がれているんだから労働由来の金を環境向上に使ったって良いだろうという気持ちで液タブの新調には初任給を全て使った。まだ何も会社に貢献していない身分で会社から頂いた大事なお金を大切に少しずつ使うなどということをせずに一撃で給料を使い果たしてしまったことにやや気分が良くなっていたが、買おうと思っていたテレビが買えない・食費を削らなければならない、などの問題は発生した。(ヨドバシで購入したためポイントが10%還元され初任給の10%分のポイントで生活必需品を購入することが出来て本当に助かった。)

 

新調した液タブで最初に描いたやつ

人力ディープラーニングを元に服を描いたがよく分からなかった。とりあえず服の色でだいぶ印象変わるっぽいし大雑把に色を決める段階で真剣に検討した方が良いのかもしれないとは思った。

 

背景を描くのが面倒なので撮った写真を背景にそのまま使ってみたやつ

女性向け服について人力ディープラーニングしたとはいえ結局よく分からなかったので、作画コストの低い(セーラーカラーとスカーフを描いてあと単色で塗っておけばそれっぽくなるので)セーラー服を描いている。あと背景に写真をそのまま使っても「う~ん?」としかならないことはとりあえず分かった。

 

7月~9月

背景を描くのは面倒でしばらくやっていなかったが、この期間は旅行で撮った写真などを参考にする形で背景も描いていた。4月~6月との比較では単純に生活に慣れてきた分で絵を描くのに割く時間が若干増えたこと、インプットよりアウトプットに振ったことで描いた枚数は増えた。

 

観音崎灯台に行ったのでそこで撮った写真を背景に使ったやつ

前に買っていたものの放置していた本*1を参考にした。背景を描くにあたっては画面全体での描き込み密度のバランスとか色彩調和とか構図とか色々考えることが多いけど分かってきたらだいぶ面白そうだとは思ったのでしばらく背景込みで描いていくモチベーションは生まれた。

ところで観音崎灯台に上れる時間は日没よりだいぶ前だし西側は海に面していないので観音埼灯台から撮った写真を参考に夕日を描いてるのはかなり嘘ということになる。あと服の人力ディープラーニングの学習データが足りていないため前回と同じような服が出力されている。反転した理由は……忘れた。

 

画像フォルダから出てきた昔に撮ったよく分からん写真を参考にしたやつ

背景はクリスタのブラシ素材集本*2に頼ってビルを描いたがほぼ労力ゼロで自分で描くより圧倒的に良い感じになるので素材集の使い方の練習した方が良いのかもしれない。

 

何故か高校同期に手持ち花火に誘われたので手持ち花火の絵を描いたやつ

手持ち花火をやったのは川沿いだったが絵は背景を海にした。写真をそのまま使うと街灯が明るいし、それを省くにしても花火を描きたいだけなのに橋とか向こう岸とか描くのが面倒そうな要素が現れてきそうだったため……

 

あべのハルカスに行ったのでそこで撮った写真を背景に使ったやつ

屋上の開放感が良かったので絵も上を開ければ開放的な感じになるかな~と思って適当に上を広めに取ったが、背景を真面目に描いた経験が無いのにキャラクターより背景の占める割合が大きいような構図にした時点で苦しかったな……という感触があった。

 

何の川かは忘れたが河川敷に行ったのでそこで撮った写真を背景に使ったやつ

前に背景の割合を大きく取ったら苦しかったので逆にキャラクターの割合を大きく取れば上手くいくなと思ったが、川も河川敷も空も全ての描き方が分からず難航し、別にキャラクターを大きく描いておけば誤魔化せるものでも無いなと再確認していた。

 

 

背景を描くことは面倒だし分からないのでやればやるほど減点材料を積み上げてしまうような印象だったのでしばらくサボっていたが、改めてやってみると結構面白かったので取り組んでいきたい。特に最近自分で行った場所とかを元に背景を描くのは自分の生活や体験を素材にしているという点で、pixivを見れば無数の上手い絵を見つけられるしAIに描かせることも出来るようになった今の時代においてもわざわざ自分で描く意味の一つになると思うし、方向性としてはやりたいことが出来ている感覚があった。

とはいえ画力不足のためにやりたいことが出来ていない面も多々ある。イラストに背景を適用するにあたってはそのままだと描き込みの密度が高すぎるので適当に情報量を落とす・イラストとして適切な形に全体の彩度/明度を変更などする必要があり、これらの操作を元画像の中で強調したい印象を強めるという目的意識の下で行っていく(べきと理解している)。が、現状何か適当に思いついた操作を加えてみるものの何か違うな……となってCtrl+Zを連打し最終的に諦めて妥協するということを繰り返している。

 

まあそんな全体の印象だけでなくもっとミクロに空の雲だの砂浜の波だのといった各要素をどう描くかもよく分からないし、背景に限らず毎回身体や服や顔や髪も全てがよく分かんね~と言いながら描いてるし全てが分かっていない。絵、難しすぎる…………

 

 

10~12月の目標

・割く時間を増やす

絵を描くのに割く時間が若干増えたと言っても現状では可処分時間の25%程度しか使えておらず、模写してるとか技法書読むとかのインプットの時間も少しはあったとはいえ5枚/3ヶ月しか描けていない。他にやってることがあるわけでもなく、残り75%の大部分は得るもの無きインターネットサーフィン・布団で転げてスマホを触る・当たらない競馬の予想などで費やしており最悪なので、このあたりの時間の使い方を積極的に転換していきたい。

絵ってマジで難しいから上手くなろうと思ったら練習効率がどうこうという話だけではどうにもならずシンプルに時間を大量投下することがまず必要っぽいなと再確認している。

 

・アニメを観る

最近になってようやくテレビを買ったので秋アニメから観ていきたい。絵を描くためのインプットとしてみたいな意識で観るつもりは無くむしろもっと気楽に、普通にアニメを楽しむ目的で観ていくつもりだが、ただ眺めてるだけでもキャラデザとか表情の作り方とか色々学ぶものはあるだろうし。

 

 

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イラストの練習を2年間行った結果

つい先日私は大学院の修士課程を卒業したのですが、修士課程の2年間を過ごす傍らイラストの練習を行いました。本記事ではその経過についてまとめていきますが、まず以下が練習の前と後での比較になります。

左: 練習開始前に描いたもの/ 右: 最近描いたもの

練習を始めようと思い立った時点では中学の美術の授業以来真面目に絵を描いたことはなく、そもそも絵を描くことに苦手意識があるという状況でした。練習を始める前に描いたものが左のものですが、どれだけ絵を描いたことがなかったかがこの拙さからも伝わってくるのではないかと思います。 練習前として載せるのも恥ずかしい。キャラクターを描くにあたって、顔も髪も身体も、全てのパーツがどうしたら良いのか分からず15分程度で描くことをやめてしまいました。
それに対して2年間の練習の後で描いたものが右のものです。こうして練習開始前後を並べると描き方への理解はこの2年で各段に深まった一方で、まだ道半ばもいいところでイラストの世界は途方も無いなと痛感させられます。 以降の本文では、この2枚を描く間に考えていたこと・行っていたことについて具体的に述べていきます。

0ヶ月目: 描くに至った経緯

経過の詳細に入る前にまず私がイラストを描き始めるに至った経緯を説明します。本章の内容はイラストとは特に関係のない身の上話になりますがご了承ください……
勿論イラストを見るのは元々好きだったのですが、大学院に入学するというタイミングで練習をし始めたのは丁度この頃に「時間が出来た」「"自分で"描けるようになりたかった」の2点が主な理由となります。

・時間が出来た
学部1,2年生の頃(=4,5年前)の私は声優のオタクとしてある声優の活動を熱心に追っていて、その方がアニメに出演したらそれを観て、ソシャゲに出たらそれに触れ、キャラソンがBDの特典になったらそれを購入し、イベントに登壇したらそれに参加しというのをなるべく全部行おうと思っており、これらを可能にするためのバイトなども含めると余暇の時間の多くをこれに費やしていました。
ですが、学部3,4年生になり大学生活の方が忙しくなってしまいます。当時の私は行けるところまでアカデミアでやっていくつもりであり、後の修士課程・博士課程で成果を出すには今のうちになるべくインプットをしておこうと考え同じ道を志す学科同期との自主ゼミに参加していました。しかしこの頃はただでさえ授業が割と重かったのでそこに自主ゼミを増やしたことで時間的にも精神的にも大部分を大学生活に割かなければならなくなってしまいました。
そんな中で趣味に割く時間をある声優の活動をなるべく全て追うところから適度に追うところへ移せれば良かったのですが、2年間声優のオタクとして過ごした中で生じていった「全て追うべきである」という思想は自分の声優のオタクとしての価値観の根本的なところに根付いてしまい「自分の出来る範囲内で良い」というところに上手く切り替えることは出来ませんでした。その結果として声優のオタクはほとんど完全にやめてしまい余暇にやることがほぼ無くなってしまったわけですが、そんな中でただただ時間的・精神的に圧迫されるような大学生活に対して高いモチベーションを維持することは出来ず結局学部4年が終わる頃には博士課程には行かず修士卒で就職することを決意していました。
それに伴って、大学生活におけるの目標もアカデミアでやっていけるようになるべく多くの成果を出そうというところから修士号を取って就職先を見つけられればまあ良いかなというところまで下がり、大学に大きな気力を割かなければならない状況からは解放されました。ただ、一度やめてしまったこともあり声優のオタクを再開することも出来ず、趣味は無いが時間は余っているという状態をしばらく過ごしていました。

・"自分で"描けるようになりたかった
前述したように趣味を消滅させたような苦しい学部3,4年の大学生活を送る中で精神的負担を軽減する術は無いかと、「深夜に音楽を聴きながら散歩する」「睡眠導入ASMRを聴く」「寝具に香水をかける」「やってない出来事を織り交ぜて日記を書いてみる」など様々な現実逃避行動を試していたのですが、こういった試みの一つに「専攻が同じで理学書を一緒に読める彼女がいるとしてその設定を練る」というものがありました。
この試みが現実逃避行動として精神的負担を軽減したかについては疑問ですが、ここで架空の人間の見た目や性格といった設定をある程度真面目に検討した経験があったことはイラストの練習を始めるにあたって重大な動機付けになりました。単純にこれをネタに一次創作が描けるというのもありましたが、こんな感じで考えていけば他にも一次創作のネタは作れるという可能性、そしていくら自分の中で架空の人間について検討しようがそれは自分でアウトプットしなければ形になることはないのだという自分でやることの必要性を感じました。
結局この時に感じた気持ちが、学部4年が終わった頃の趣味は無いが時間は余っていた当時の自分をイラストの練習へと向かわせることになりました。

 

1ヶ月目('21/03): 絵って練習で上手くなれるかも

とは言ってもそもそも自分のそれまでに絵を描いた経験は小中学生の時に受けた美術の授業程度で、授業で絵が上手くなったなという手応えを感じたことも特に無く、練習したところで自分に絵が描けるようになる確証は持てないでいました。そのためまずは練習を始める以前の、「本当に絵って練習で上手くなれるものなのか?」という疑念を晴らすところからの出発でした。
そこで、とりあえず評判の良い本を買って何か紙に描いてみようとまず購入したのが人体デッサン入門書における名著として名高い ジャック・ハム『人体のデッサン技法』でした。

この本は顔や身体から手, 更には服や靴の描き方といった豊富かつ重要内容をわずか120ページほどにコンパクトにまとめきっているところが特徴で、エッセンスの凝縮され具合には刊行から40年以上経った今でもなお高い地位を確立しているだけのことはあると感じさせられます。実際、序盤の数ページで解説されている「長さを測って顔のパーツを顔の縦幅/横幅に対してある一定の比率の大きさと位置で描く」という方法を元に顔を描いてみたら前よりは上手く描けたなという感触がありました。

左:練習開始前/右:『人体のデッサン技法』を数ページ読んだ後

冒頭にも載せたように左が練習開始前、右が『人体のデッサン技法』を数ページ読んだ後のものです。(改めて見るとどちらも稚拙なのはその通りですが、当時の自分にとっては大きな進歩に感じられたので……)

最初の数ページだけで即座に効果があるなら1冊読みきればだいぶ上手くなれる?、まだ入門書なんだし他の本も読んでいけばもっと!?という手応えを掴めました。とはいえ『人体のデッサン技法』の重要事項が凝縮されているという特徴は当時の自分のような超がつくほどの初心者には必ずしも良いことではなく、1ページ読み進めるにも大変で序盤で早々に挫折し、うえだヒロマサ『ヒロマサのお絵かき講座』へ乗り換えてしまいます。

『ヒロマサのお絵かき講座』は全3巻で、1巻目で顔, 2巻目で体, 3巻目で手の描き方を解説しています。内容としては大雑把には『人体のデッサン技法』の内容をマンガ・イラストのための言葉で3冊に分けて丁寧に解説したような感じでより初心者向けの構成になっており、全く絵は分からないがキャラクターイラストを描いてみたいという当時の自分にはピッタリでした。3冊計600ページを読み終えるまでは遠い道のりですが、読めば確実に上手くなれそうな無理なく読める本が分かり今後の目処が立ったところで1ヶ月目を終えることとなります。

 

2~3ヶ月目('21/04~'21/05): 液タブを買ったので後に引けない

ひとまずは『ヒロマサのお絵かき講座』を参考にコピー用紙に鉛筆で何か描いていくという形で練習していけば良く液タブを買うとかはまだまだ先かなと思っていたのですが、ふと入ったヨドバシカメラで国内メーカーであるWacom製の液タブCintiq 16の期間限定割引セールが行われていることを発見します。
液タブについては使ったこともなかったので違いがよく分からず16インチ程度であれば割と何でも良くて値段の面からWacom製品よりもむしろ海外製の方が良いとも思ったのですが、何人か好きなイラストレーターの作業環境を調べた時にCintiq Pro 24が頻出していたのでWacom製品への憧れが有り、買うならCintiq 16が良いな~と思っていたところなのでそのまま勢いで購入してしまいます。声優のオタクをやめて暇だった時もバイトだけは続けていたのである程度の貯金があったというのも功を奏しました。しかしCintiq 16そのものに加えて専用のスタンド、デジタル絵を描くためのソフトであるCLIP STUDIO PAINT(以降クリスタ)なども必要になります。加えて、ソフトの使い方やデジタル絵の基本事項に関する技法書も購入しました。更にこのタイミングでDMMブックスの初回購入70%オフセールが開催され、もうこうなったら全て揃えてしまえとインターネットの評判だけで今後使う見込みがありそうな本も20冊ほどまとめて買ってしました。使った金額はあれよあれよと10万円を突破し、流石にこれだけ費やしてしまった以上今さら後には引けないよなと当時はいつも考えていました。
しかし最終的に自分が描きたいものはデジタルイラストであったため、早い段階で液タブを購入しておいたことは正解でした。『ヒロマサのお絵かき講座』で解説されているような基礎的な内容を理解することと液タブ・クリスタの操作に慣れることを同時に進められましたし、グリッド線を表示出来ることが「比率を測って描く」ことを容易にしたりCtrl+Zのような便利なショートカットがあったりなど触ったばかりの段階でも単純にアナログよりも便利で様々な利点がありました。

『ヒロマサのお絵かき講座』などをある程度読んだあとでデジタルで描いてみたものが以下になります。

描き始めた日'21/05/06 (ホロライブEN Watson Amelia)

これはごく普通の笑顔を意図してたのに嘲笑してるようにしか見えなくて描き終わってから一人でウケてました。(手を口元に持っていってしまったせい、なんでそんなことを?)このキャラクターはホロライブENのWatson Ameliaですが、声優のオタクをやめて以降アニメは1クールに1本観るかどうかというところになってしまった一方でVTuberは配信自体はほぼ観ないながらも切り抜きを倍速で観るとかオリ曲を聴くとかが出来ていたので流行りのアニメキャラよりVTuberの方がなじみがあること、VTuberは三面図が公開されていがちで特に人気のある人はpixivに豊富にファンアートが存在して参考になることから練習でVTuberを描く割合はやや高かったです。

また、この時期には以下の2冊が特に参考になりました。

・ 乃樹坂くしお『とことん解説! キャラクターの「塗り」入門教室 CLIP STUDIO PAINT PROで学ぶ描画の基本テクニック』
この本は著者の作例とその解説を参考にしながら同じようにペンやブラシを入れていくことで塗り方を習得出来るというコンセプトの本ですが、どこにどういったレイヤー, ペン・ブラシの設定でどの色を塗れば良いかが全て記述があり、そもそも影の塗りってどうなってるのか全く分からないという段階の1冊目に読む本としては最適な本でした。アニメ塗り・ブラシ塗り・グリザイユ画法・グラデーションマップと4種類の塗り方の説明があり内容も結構豊富です。私はブラシ塗りの章まで読んだところで一旦ここでブラシ塗りの理解を優先した方が良いかな~と思って読むのを止めたのですが結局そのまま続きを読むことなく未だにアニメ塗り・ブラシ塗りの章までしか読んでいないですが、この部分だけでも得るものは大きかったです。

・ 椎名見早子『デジタルパース塾』
1冊全てをパースに関する内容だけに費やしているだけあって透視図法のような基本的なところから始まりながらもパースに合わせて線分をn等分する、画像素材をパースに合わせて変形する、更には画像からのLT変換による線画抽出など幅広い内容について記述がありパースについて辞書的に使える本で(といっても全然厚くはないですが)便利でした。こういった内容はインターネットでいくらでも出てくるところではありますが、初心者向けの平易な記述で重要な事項がよくまとめられていることに本を買う価値はあったと感じます。

 

4~6ヶ月目('21/06~'21/08): 練習方法の模索

これまでのところでひとまずどうすれば形に出来るかは分かってきたので、この時期は色々試しながらどうすればより上達出来そうかを模索しながら練習を進めていました。

とはいっても、基本的な枠組みはさいとうなおき氏のYouTubeチャンネルで紹介されていた"三ヶ月上達法"(今はチャンネルが停止されているようなので動画では確認できませんが……)に従い、イラストを描く→改善すべき箇所を考える→その箇所についてどうすればより良くなるのか技法書や画集などを参考に検討して練習する→またイラストを描くという流れに沿っていて、模索していたのは「技法書や画集などを参考に検討」の部分だけでしたが。(色々試していた記憶だけあって具体的に何をしていたかは正直うろ覚えなのですが、上手いイラストの線をなぞるとか模写するとか長さを測るとかスポイトで色を取るとか自分で描いたやつを重ねてみるとかをしてた気がします……多分……)

"三ヶ月上達法"の動画でどれくらいの頻度でイラストを完成させることが標準とされていたかは覚えていないのですが、大学院入学直後の新たな環境でやや精神的に疲れる部分もあり描いていたのは2週に1枚ペースで、そもそも三ヶ月で完了させるようなつもりも特にありませんでした。この時期に描いたイラストを以下に抜粋します。

左:描き始めた日'21/05/29 (ウマ娘 エイシンフラッシュ)/ 右:描き始めた日'21/08/07 (オリジナル)

何も分かっていないという状態からのスタートだったこともあって描く度に新しい気づきがあり、描く度に着実に上手くなっているような感触がありました。今振り返ってみると遅々とした歩みでしかなかったような気もしますが少なくとも描いた瞬間は大きく進歩したと感じていたことを覚えています。

また、この時期は訳あって1ヶ月ほど液タブを使えない期間があったのでそこでアナログで出来る練習法もクロッキー・鉛筆デッサン・ボールペンスケッチと試してみていました。
クロッキーは人の概形を短時間で写し取るものですが、 糸井邦夫『5分間で人物をとらえる! クロッキー20日間速習帳』で人物写真を見ながら5分間でA4コピー用紙にそれを描き写す形で行いました。
鉛筆デッサンは時間無制限で実物を見ながら単色でその立体感などを精密に表現するもので本来なら実物からデッサンする必要がありますが、まずは マノジュ・マントリ『鉛筆1本で何でも描ける マノ先生のリアル鉛筆デッサン』に載っている写真とそれに対応する作例から模写をしていく形で行いました。
ボールペンスケッチはさいとうなおき氏のYouTubeチャンネルで身の回りのものをノートにボールペンで短時間で描いてみる練習が勧められていたので(これも今は元動画が確認出来ませんが……)B6ノートに黒いボールペンで描いていく形で行いました。

クロッキーは短時間で出来ることと練習してる感があることから結構長続きしたのですが、正直あまり面白いと思ってなかったのでクロッキーを描いてから反省して次に繋げるよう何かを考えるなどは出来ずただやっただけになっていて、今思うと勿体ない練習になっていたと思います。結局半年ほどやったのですが、クリスタなら3Dデッサン人形なぞれば人体のバランスがそこまで崩れることないからこんなことしないでも良くない?と思ってからは全然やらなくなってしまいました。
鉛筆デッサンはかなり時間がかかるので液タブが使えるようになってからはそれだけ時間をかけるなら普通に液タブで何か描きたいなと思ってしまい、結局本に載っている写真とそれに対応する作例の模写をしただけに終わってしまいました。写真・作例を模写するのは2D→2Dの操作ですが本来デッサンは3Dの物を紙の上に描いていく3D→2Dの操作なのでこれではデッサンをやったとは言えません。このようにデッサンに至る前段階でやめてしまったのでデッサンの練習効果については今でも不明です。
ボールペンスケッチは短時間で出来るかつボールペンとノートさえあればどこでも出来るので今でも気が向いたら時々やっています。

上:描いた日'21/06/17 / 下:描いた日'22/08/09

上がスケッチを始めた当初のもので下が1年ほど経った後のものになります。どうすれば紙の上に立体感を出せるかを考えながら影のつき方を見ていくといった観察力がついた実感もあり効果のある練習だったように思います。

7~12ヶ月目('21/09~'22/02): もっと上手くなりたい

だんだんどう練習していけば良いかが分かってましたし、イラストの描き方が分かってくると同時にイラストを描くために必要な能力・知識は膨大なものであることも分かってきてこの時期が一番意識高くイラストの練習を行っていました。
今まではまだ色々試してみていいましたが、この時期は大まかには
①一日の練習の最初にはPoseTrainerなどを使ってクロッキーをやる
②気持ちと時間に余裕があったら美術解剖学の本を読み進める
③その後で(主に平日は)技法書を読み進める or (主に土日は)イラストを描く
※ただし外で過ごす時間が長い日はこの限りではなくボールペンスケッチをやるか、描きながら進める必要のないような色彩・構図・光などについて一般的な内容が書かれた技法書を読んでおく
の流れでやっていくことを心がけていました。これだけ見ると結構頑張っていそうですが、心がけていただけでこの通りにやれていた日は稀で、今思うとこの時期はただ意識が高いだけで行動がついていってなかったです。

「イラストを描くために必要な能力・知識は膨大なものである」と言いながら生活の中で大学院・バイト・睡眠以外のほぼ全ての時間をイラストの練習に費やすという前提のもと技法書を6冊並行して読む予定を立てて3日ももたずに破綻するといったことを何度もやっていました。(勉強の計画を初めて立てる中学生?)
また、一日の最初にクロッキーをやるのはクロッキーが一番大事だからというよりは人の描き方を学びながら気持ちを入れていく・弾みをつけるみたいな意図でしたが、クロッキーだけ2時間くらいやって終わりの日もありました。そんなにクロッキーばかりやっていた割にはあまり面白いと思ってなかったので、あまり集中出来ずただやってるだけになっており、しまいには段々イラストの練習をやっていくのがつらくなりました。本当にめちゃくちゃ。

やった方が良いことをやってないのに特にやらないでも良いことを優先してやっていたりもしました。イラストで使うような色彩の知識は色彩検定のテキストにまとまっている、と知ってこの勉強のモチベーション維持も兼ねて検定を受けたのですが、折角受けるならと1級を受験しました。イラストへの利用を考えるならPCCS, 色彩調和, 配色イメージといった2,3級の内容の一部分を理解しておけばもう十分で、わざわざ1級を受けることの意味はイラストの上達という観点から見れば皆無ですが……
しまいにはイラストを描いていくんだったら美術史を知っておきたいなと400ページある西洋美術史の本を購入するところまで迷走しましたが(これは 山口つばさ『ブルーピリオド』を読んだ影響も大いにありそう)、結局買ってすぐに就活が始まってこれを読んでいく気力は無くなりこの本は今でも積ん読状態にあります。

意識を高く持てていたことそれ自体は全然悪いことでは思いますし、何だかんだ2年間の中でこの時期が一番イラストの練習に時間を割いていました。寄り道として受けた色彩検定1級も、モニターの色域表示に使われるxy色度図が理解出来たり、ファッションの流行の変遷を色彩の観点から整理したりといった内容も割と面白かったのと無事合格出来たのとでイラストの上達に寄与したかは置いておけば、良い体験ではありました。

特に役立つ場面は無いですが……

めちゃくちゃな予定を立てて練習効率を下げてしまったことや面白いとは思ってなかったクロッキーばかりやって無駄に疲弊していたことについては特に擁護は出来ませんが、無駄な疲弊であったとはいえ「創作活動の練習の中で疲弊する」という体験自体は創作活動における苦しみを表した類の曲や漫画などへの共感力を高めてくれた感覚があるので完全に無駄でも無かったとは一応思っています。(クロッキーという練習方法が良くないということではなくて当時の自分とは相性やり方が悪くてそれに気付けなかったのが良くなかったという話です。)

この時期に描いたイラストを以下に抜粋します。

左:描き始めた日'21/11/29 (ホロライブ 潤羽るしあ)/ 右:描き始めた日'22/01/25 (ホロライブ 雪花ラミィ)

また、この時期には以下の2冊が特に参考になりました。
・ ハンス・P・バッハー 『Vision ヴィジョン ーストーリーを伝える:色、光、構図』
構図や色・光の配置などについて幅広い内容が収録されています。イラストに特化して解説する本ではなくどちらかというとアニメーションへの応用を主眼としていますが、イラストへの応用も十分に可能です。実際、「人や物をこういったラインで配置するとこういった印象が生じる」「画面をこう分割するように人や物の要素を配置するとこういった印象が生じる」という記述を読んだ後でpixivや画集を見てみると確かにこの本の解説に当てはまる絵が数多く存在することに衝撃を受けました。

・ リチャード・ヨット『画づくりのための光の授業 CG、アニメ、映像、イラスト創作に欠かせない、光の仕組みと使い方』
これも書名の通りイラストに特化した内容では無いですがイラストを描く上で使いうるような、光に関する内容全般が開設されています。光がどういった印象を与えうるかについては勿論のこと、実際の写真を参考にこの条件下では光がどういった形で見えているかについて詳細に解説されているのが印象的でした。人間が物の色を知覚する時は"色の恒常性"のために光の色にあまり引っ張られることなく同じ物はいつも同じ色として知覚してしまうため、光の色の変化により物の見え方が実際にどう変わったかは見過ごされがちですが、写真として並べてみると想像以上に違っていることは印象的でした。

二冊とも扱う内容が豊富かつ視覚芸術全般に使える一般的な内容として記述されているためこれらの内容を咀嚼してイラストへの適応を考えるのは自分でやる必要があるのですが、私にとってはそれは難しく読んですぐに効果が出るというようなものではありませんでした。しかし知識として一旦インプットしておくべきもしくは必要があるような内容が多く載っているのは間違いないと思うので、これを読んだ後でイラストに特化してこのあたりの内容を解説しているのを読むと良かったのかもしれません。

 

13~18ヶ月目('22/03~'22/08): 練習に疲れてきた

このあたりで就活のために一旦練習を中断することになるのですが、前述したように練習をやるのがつらくなりつつあったところだったので、中断してから上手く気持ちを入れ直すことが出来ずこの半年ほどはあまりやる気を持てずにいました。しばらく布団でスマホをやり、それに飽きてから「他にやることもないしイラストの練習でもやろうかな……」と布団を這い出てようやく練習が始まるという感じです。

正直この時期は今思い返してみても特にこれといったことはなく7~12ヶ月目の頃に抱えていた意識の高さは抜け落ちてだらだらと練習をしていたという感じなのですが、半ば義務感でやっていたが相性の悪かったクロッキーを全然やらなくなりイラストを描く時間や塗り方に関する技法書を読む時間に充てていました。また、7~12ヶ月目の頃の技法書を6冊ほど並行して進めようとして破綻したことも、一旦広く浅く触れておいたことで見通しが立ちやすくなったという形でやや活きていたような気もします。そういった理由からイラストに取り組む時間は減ったものの時間対効果の面ではおそらく向上していました。

また、これまでは自分で人間描くぞ、クロッキー美術解剖学をやっていくぞと キム・ラッキ『キム・ラッキの人体ドローイング』とソク・ジョンヒョン『ソッカの美術解剖学ノート』の二冊を読もうとしていたのですが計1000ページも読み進めていくのはあまりにも厳しく、このあたりで独力で人体を描くことは諦めてクリスタの素材として入っている3Dデッサン人形をなぞり始めました。胴体のアタリを直方体で取って腕はこの直方体からこう接続させて頭の大きさがこれくらいだから全部の長さはこれくらいで……と考える手間が省けるのは圧倒的に楽かつ間違いなく描けますし、ここで楽をしたおかげで顔と髪のバランスの検討に集中出来るようになったりと全体的に良い効果があった気がします。

この時期に描いたイラストを以下に抜粋します。

左:描き始めた日'22/06/15 (かぐや様は告らせたい 早坂愛)/ 右:描き始めた日'22/07/24 (ウマ娘 メジロアルダン)

また、この時期には以下の3冊が特に参考になりました。
・ mignon『mignonがしっかり教える「肌塗り」の秘訣 おなかに見惚れる作画流儀』
・ どうしま『どうしまが本気で教える「服」の塗り方 フェチが芽生える作画流儀』
・ Paryi『Paryiが全力で教える「髪」の描き方 ヘアスタイルにこだわる作画流儀』
いずれも肌塗り・服・髪といったように一つの要素に対して一冊使って解説をしているだけあって細かく丁寧に解説されています。例えば肌塗りであれば腕, 脚, 肩など部位ごとに分けてどこに注意して影をつけていくかが詳細に解説されていますし服であれば生地ごとに分けて、髪であれば髪型や前髪, 横髪といった髪の位置など色々と細かく分類されています。
三冊とも有益な記述が散りばめられていますしただ眺めているだけでも結構面白いですが手を動かしながら通読するのはかなり大変なので、私はイラストを描いていく際に何か分からない箇所が出てきたら参照するという形で辞書的に使っています。

なおこれらは同じ出版社が同じような書名で同じような時期に出した本ですが続編的要素は特に無いですし、著者や内容が違うので本の構成も割と違っています。

 

19~24ヶ月目('22/09~'23/02): AIが出現した中で練習していく意義は?

半年も経ってくると少しずつモチベーションも回復してきてまた頑張っていこうと気合いを入れ直していたところで、冷や水を浴びせられるかのように新型コロナウイルスに感染してしまいます。私が布団に引きこもることを余儀なくされていた10月初旬、Twitterでは凄まじい画像生成AIが現れたとNovelAIの話題で持ち切りで、今まで絵を描いたことは特に無さそうな人が私が25時間くらいかけて描いたものよりも圧倒的に上手いイラストを大量にあげているのを何度も見せつけられてしまいました。

画像生成AIというジャンルの存在はこの少し前にミミックが話題になったことで知っていましたが、ミミックの紹介画像では顔しか生成していなかったので、「まだAIが生成出来るのは顔程度である」「全身・背景まで入れたら圧倒的に要素数が増えるので“顔だけ描ける”から“イラストが描ける”までは遠い」と(画像生成AI界隈の実情などは特に調べることなく)勝手に考えていました。なので突如として美麗なイラストを生成する画像生成AIが自分の目の前に現れたことは本当に、本当に衝撃的で、病気が治っても机へは向かわずに布団の中でインターネットをやりながら「今さらイラストの練習をする意義はあるのか?」とうだうだと考えてしまいました。

また、他人の描いたイラストをAIの学習データセットに加えることの法的・倫理的な妥当性については置いておくとして、そもそもAIにイラストを生成させるのは創作活動と言えるかについても考えていました。
AIは既存のイラストから学習していると言っても今までに無かった謎のジャンルが生み出されたりもしているしプロンプトの指定と乱数による自由度は実用の範囲内では実際に手を動かして描くのと同等程度のものがあるのではないか?もしそうであれば画像生成AIを用いることは単にイラストを描く時の作業手順をより容易な別のものに置き換えただけと言って良いのでは?
そして新技術が作業手順を置き換えて容易にする、という点ではそもそもデジタルツールの普及もこれに当てはまっていたように思います。乗算・オーバーレイなどのレイヤー合成機能により明暗表現が、多彩なブラシにより水彩画風の表現がといったようにアナログでは手間がかかるかつ高度な技術が必要とされていた様々な要素が簡便に実現されるようになりました。実際デジタルツールの普及に伴い2000年代以前と以降とで流行のイラストは変化しイラストに含まれる情報量も大きく増加し状況を一変させています。このようにアナログ→デジタルの変化とデジタル→画像生成AIの変化は類似していて、つまり画像生成AIに描かせることもデジタルイラストと同じくらい創作的なのでは?机に向かってペンを運ぶこと画像生成AIに向かってプロンプトを投げることに本質的な違いは無いのでは?などと当時の私は考えても仕方のないことばかりを考えていました。

ただ考えているだけでは何にもならないので自分でも画像生成AIを触ってみましたが、即座にクオリティの高いイラストが出てくるのは確かに面白いです。入力するプロンプトを変更すればちゃんとそれを反映した出力を返してくれるので、やはり色々考える余地はあるし自由度も高い。数日はペンを握ることも忘れてプロンプトの試行錯誤に没頭していましたが、逆にその数日で大体満足してしまいました。プロンプトの指定が悪いのか試行回数が足りていないのか完璧に自分の理想と合致するイラストが出てくることは全然無かったですし、プロンプトの試行錯誤と言ってもやってることはpixivで色々検索ワードを変えながら自分の見たいイラストを探していくのとやってることが変わらないような気がしてしまいました。画像生成AIに描かせることも創作活動と言えるのかもしれないと考えていたもののいざ使ってみると"創作してる感"は私にとってはあまり無く、自分で描くのをやめてAIに描かせていくのは何か違うなと思いました。

とはいえ折角画像生成AIを触ってみたので今後のトレンドになるかもしれない「AIを作業手順に組み込んだイラスト作成」をしてみたいということで、髪型と瞳の色だけ決めてから色々生成させてみたものを参考にキャラデザを具体化する・舞台や服装を決めて色々生成させてみたものを参考に構図を具体化するといった使い方を試してみました。
この手順で描いたものが以下の二枚になります。

左:描き始めた日'22/10/15 (オリジナル)/ 右:描き始めた日'22/11/11 (オリジナル)

キャラデザ・構図を考える過程は簡略化されましたが、「様々な高いクオリティのイラストで学習してAIが生成した中程度のクオリティのイラストから学習して低いクオリティのイラストを生成している感覚」が最悪で心が折れそうだったので手順にAIを組み込むのは早々にやめました。せめてAI作品から品質を劣化させない自信があったらまた違ったかもしれない。

AI絵師とやらになりたいわけでもないしAIを作業手順に組み込むことも出来ないんじゃあもうAIと上手く付き合っていくこと出来ないしこれからどうしたら良いんだという悲観的な気持ちにもなったのですが、ここでイラストを練習している人をTwitterで適当に探して様子を見るとこんなに自分のようにAIが云々とうだうだ言ってる人ばかりではない、いやむしろ全然いないということに気付きます。彼らはそういったことを気にせずにただイラストを描くことを楽しんでいました。
考えてみると、イラストを生業にしているわけではなくただ趣味として描いているだけの私がAIより優位に立たなければならないという必然性はどこにもありませんでした。ただ趣味として描いているだけであるからこそ、AIの存在や自分がどの程度上手いかなどということは特に気にしないで気楽にただ描くこと自体を楽しんでいるだけで良い自由があるのだということに気付かされました。

結局しばらく考えていた「今さらイラストの練習をする意義はどこにあるのか?」という問いへの答えは「そもそもそんなものは初めから無かった」というものでした。AIと上手く付き合っていかずとも別に無視していて良く、ただ気楽にやりたいようになっていけば良かったのです。

なんてことを考えている間に修論の時期になってしまい再びしばらくはイラストを描かなくなってしまいましたが、修論提出後にリハビリがてら「Instagramを眺めて目に留まった画像から服と構図を真似てイラストを描く」というのをやりました。改めて気楽に取り組んでみると単純に描くこと自体やっぱり面白いなとも思えましたし、「もっと上手く速く描けたら間違いなくもっと楽しいしやっぱり上手くなりたいな~」と周りとの比較ではなく自己完結する形で上達への欲求を改めて持つことが出来ました。

そして久々に構図から自分で考えて描いたものが冒頭にも載せた以下のイラストになります。

描き始めた日'23/02/24 (オリジナル)

思い返せば構図から検討していくのは数ヶ月ぶりでしたがここでの試行錯誤もまた面白く感じました。

振り返りと今後

以上が私がこの2年間でやってきたことでした。遠回りも多々ありましたしもっと上手くなれただろうという気持ちはあるのですが、絵を描くこと全般への苦手意識だけがあった初めの頃からは想像もつかない2年間だったのでこれを遠回りをせずに最短ルートを進み続けるというのは無理のありすぎる話だったとも思います。

また、そもそも創作活動に触れてみたこと自体も良い体験でした。最近は同人音楽をよく聴いているのですが、イラストと音楽では分野が違いますし、曲を作って即売会に出しているような方々と自分とでは実力も、費やした時間も、熱意も、何もかもが違ってはいますが本職ではない中で創作活動をやっていくことの難しさの一端を感じ取れたような気がしますし、これを乗り越えて曲を出している方々には憧憬の念を抱かずにはいられません。こうしたことを考えながら曲を聴くと普段より二割増しで良いものに聴こえてきますが、これはこの二割は2年間によって得られたものの一つだと思います。

今後は社会人になることで生活や心境がどう変化するか、そもそもイラストの練習どうこうの前にどれだけ自由に使える時間があるのかすら分かりませんが、「もっと上手く速く描けたら間違いなくもっと楽しいだろうな」という気持ちを新たにしたところなので、今のところは練習は継続していきたいと思っています。(他に週末やっていることも競馬観戦くらいしかないですし……)

練習を続けるにあたっては、特に速く描くことはこれまで意識していなかった分今後の課題であると認識しています。結局イラストを描いていて一番楽しいのは描き終えた時ですが、現状1枚描くのに簡単な背景込みでも20時間以上かかっています。そのため土曜日に始めても平日に持ち越すことになり段々飽きてしまうのですが、現状の「典型的な物でも色々描き方を調べながら描いている」「終盤になってようやく違和感に気付いて修正し始める」「どこで手を抜いていいか分からずありとあらゆる線を丁寧に描いてしまう」分は上達によって短縮可能なはずです。もし10時間まで短縮出来れば週末だけ、頑張れば1日で完成させられるわけでおそらく途中で飽きることもなくより楽しめるのではないかと思います。

とはいえ単に趣味でやっているだけだからこそ気楽に自由にやって良く、いつでももっとのめり込んでも良いし完全にやめてしまっても良いという気楽さは忘れないようにしていきたいです。

 

最後にpixivのURLを載せておきます。

www.pixiv.net